FC2ブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 
先の記事に続いて昔のSSその2





以下SS


銀誓館学園の片隅にある畑と傍に建つ小さな部室。

いつも賑やか過ぎるほど賑やかで騒々しい部室だが、今日は珍しく静まり返っている。

放課後、私はいつもの様に一人稽古に出る前に部室に顔を出そうと部室に向かっていた。
「こんにちわ~!」
いつもの様に部室の扉を開けて……、私はがっくりと肩を落とした。


私の目の前、部室の真ん中に堂々と鎮座していたのは真新しいコタツ。
柔らかな布団と敷布団は見ているだけでとても暖かそうな逸品だったが…。

もう6月も終わろうという梅雨の頃、季節はずれも甚だしい物だった。

「またコタツが出てる…! 見てるだけで暑いのにっ!! もう、しょうがないなあ…」
ぶつぶつと愚痴りながらもコタツを片付け始める。

布団を再び圧縮して押入れにしまい、コタツを解体して倉庫へと持って行く。

倉庫に向かうと倉庫の先に見える畑。
野菜や肉、その他いろんな物が植えられた奇妙な畑。

梅雨の晴れ間の夕日に照らされた畑の光景は、何故だか私の記憶の琴線に触れた。

「もう半年になるのかぁ…。早いなあ」

鎌倉に、銀誓館にやってきた日。

それはこの畑にやってきた日でもあった。


                          ◆◆◆

私は鎌倉のお祖父ちゃんの所に預けられることになった。
友達は私だけ鎌倉に行くことを不思議がったが、その理由を聞かれると曖昧に笑って誤魔化した。

理由なんて誰にも言える訳が無い。
私が【能力者】として覚醒したからだなんて、悪い冗談の様な理由…。


【能力】が目覚めてから1週間後、私は鎌倉にやってきた。
後で聞いたけど、お父さんもお母さんも親戚達も、私が生まれる前に起こったゴーストとの戦いで戦った元【能力者】だったんだって。


私が生まれる前に現れたゴーストと戦ったお父さん達初期の能力者は、より強い能力者を育てる為に鎌倉に学校を建てた。
その後能力者を引退したお父さん達は生まれた土地に戻り、次代の能力者が現れるのを待つことにしたらしい。
そして数年後、私が生まれた。

「…家に帰りたいなあ。」
こっそりとため息をつく。

家を出る時、お父さんはいつか見た悲しいような誇らしいような顔で、頑張れと送り出してくれた。
お母さんは泣きながら私を抱きしめてなかなか放してくれなかった。
友達や従兄弟達、おじさん、おばさん達もお別れに来てくれた。

でもお父さんやお母さん、皆と会えなくなるのが辛くて、行きたくない!って何度も叫びそうになった。
鎌倉のお祖父ちゃん、お祖母ちゃんは大好きだし不安は無かったけど、家族や皆と離れるのは嫌で堪らなかった。

それでも。

それだけは言えなかった。

多分お父さんは私のそんな気持ちを判った上でこんな事を言ったんだろう。

「志摩、能力者、またはその素質を持った者はゴーストに狙われる。…それは周囲の人間も巻き込む可能性があるんだ」

私は自分の【能力】を鍛えて、自分や周りの人達を守れるようにならなくてはならない。
銀誓館からやってきたと言う能力者の人と一緒に鎌倉に行くことが決まった時、私はそう誓った

そして今、私は銀誓館学園に向かう市電…詠唱調律車両に乗り込んだ。
これに乗る事で能力者としての力を操る為のカード、イグニッションカードを作るのだと言う。

中には誰もいない……どう見ても普通の市電の電車に見える。
市電に乗るだけでそんなものが作れるの?
すでに怪異に触れたとは言え半信半疑の私に、ここまで一緒に来てくれた能力者のお姉さんが優しく笑って言った。

「大丈夫、乗れば判るよ。これに乗って学園までやってきたら貴女は私たちの仲間、これから宜しくね、志摩ちゃん」
そう言ってお姉さんは私にクッキーをくれると市電から降りた。

「一緒に乗っていかないの?」
私が聞くとお姉さんは首を振った。

「それは一人で乗っていかなくてはならないんだよ」
タイミングよく電車がガタン、と動き出す。

「大丈夫、私達は先に行って待ってるから、また後でね!」
笑顔で手を振るお姉さんに見送られて私は電車に揺られ始めた。
ぼんやりと手を振り返しながら、私はお姉さんの名前を聞いてないのを思い出した。

「後で会ったら聞いて見よう」
貰ったクッキーの袋を開いて一つ口に入れる。


紅茶の優しい香りがするクッキーを食べながら


私は能力者への道を進み始めた。
スポンサーサイト
 

<< 軍人の誇りを胸に | Home | 久し振りの更新が昔書いたSSな件について その1 >>

コメント

コメントの投稿

URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)


 BLOG TOP 

powered by

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。